保育ICT
保育士求人のホームページ活用
〈1:課題と対策の整理〉
2023/02/07
弊社ではシステム提供のほかに社会福祉施設のWeb制作・運用も行っていますが、その中で聞こえてくる「保育士求人」に関する問題について、メールマガジンにてアンケートを実施しました。その結果や厚生労働省の資料をもとに、現状の課題整理、園で行える対策についてまとめました。
アンケートでは、保育士の求人を行う方法や課題についてお聞きし、以下のようなお困りごとがあることが浮き彫りになりましたので、ひとつずつ見ていきます。
1.お悩み:人材派遣・紹介会社の高額手数料
人材派遣・紹介会社に多くの手数料を払わないと保育士を雇えない?
保育士不足については、職場環境の問題ばかりが取り上げられがちですが、そういった記事の多くは派遣会社等への登録誘導のコンテンツがほとんどです。施設のホームページで保育士を募集してもエントリーがなく、一方で派遣会社からの紹介が毎日のように届く。。。結果、施設側は多額な税金が投入されている保育士の給与のうちの3割程度を人材派遣・紹介会社への手数料として支払わなければ、保育士を雇えないないという現状があるようです。
弊社のアンケートに寄せられたご意見
「どこに募集を出しても人がこない。地方では特に保育士が集まらない。にもかかわらず派遣会社等からは毎日のようにFAXや電話がくる。」
「求人票を見ると派遣の方が給与的に高い」
「派遣が検索の上位に表示されるため、手数料を派遣会社へ払う悪循環に陥っている。」
「人材紹介会社経由では手数料が高額すぎたり、採用しても1年以内で退職するケースがあり困っている。」
福祉医療機構による調査
「人材紹介会社はHPで転職を促し、だめなら次を紹介するような文句をHPでうたっている。巧妙に人を回転させ収益を上げるような仕組みを作っている。その上をいかなければこの流れは止められそうにない」
「公費を人材派遣会社に使うより、ハローワーク等から無料で採用し、保育備品や職員の教育費、環境整備費等に使いたい」
●引用元サイト・資料
【PDF】福祉医療機構 リサーチレポート(2021年2月17日) >P14
【PDF】サーヴ メールマガジン「サーヴの森」実施のアンケート結果(2021年12月)
2.お悩み:ホームページからのエントリーがない
どこに掲載しても慢性的な人材不足
お悩み1で触れたように、派遣会社や紹介会社以外の採用ルートにエントリーが無いとなると、高額な手数料を負担しないと保育士が雇えないという状況に陥ってしまいます。ということはホームページは不要なのでしょうか。根本的なところからじっくり調査してみた結果、保育園・施設側が提供している求人関連情報と、求職者が求めている情報にずれがある可能性が見えてきました。
ホームページはやはり必要
まずは、求職者が保育園のホームページを見ているかどうかという点について、厚生労働省が実施した調査(保育の現場・職業の魅力向上検討会 第6回参考資料)によれば「保育職の就職に向けた活動として、養成校の学生の約8割は所属学校にある求人票及び就職資料を閲覧し、約7割の学生はインターネットにより園の情報収集を行っている。」とされています。
保育園が直接発信する情報は、よりリアルで信ぴょう性が高いものです。最終的にどのルートからのエントリーだとしてもホームページは検索されますので、選ばれる保育園になるためには、求職者が重要視している情報をしっかりと捉えて発信していく必要があります。 インターネットで施設名検索した場合、ホームページ制作者にて所定の手続きを済ませれば公式サイトとして上位に表示することは可能です。
現在、園が提供している求人情報
では、現状で園がどういった求人情報を提供しているのか、弊社で行ったアンケート結果では以下の通りでした。ホームページに関わらずにお聞きした回答です。
求人活動において最低限の情報はまかなえているように見えますが、実際の求職者はどういった情報を欲し、何を重要視しているのかを見ていきます。
保育士希望者が求める情報は「方針」、「雰囲気」、「人間関係」
既出の厚生労働省の調査によれば、「就職先を決める際に重視したこと」のTOP3は保育理念・方針や保育内容、人間関係、保育環境でした。同資料にある「過去に保育士として就業した者が退職した理由」の第1位が3割強で「職場の人間関係」であることからも裏付けられます。
さらに詳細な情報として、保育士として働く場合に施設に求める条件や重視する点としては、「仕事量が適正」、「休暇が保障」、 「家事や子育て、介護を理解」、「やりがい」などが上位に入っています。
以上をふまえると、園が主体的に提供している情報はまだまだ不足しており、「どういった人が働いているのか」、「職場の雰囲気はどのような感じか」ということをもっと伝えていく必要があります。
このように見ていくと、保育士求人に有効な情報を十分提供できている保育園・こども園はまだまだ一部かもしれません。では具体的にどういったコンテンツが有効なのかを見ていきます。
●引用元サイト・資料
【PDF】厚生労働省:保育士の現状と主な取組(令和2年9月17日)
・P14「養成校の学生の保育職への就職にむけた活動(その1)」
・P12「養成校の学生が就職先を決める際に重視したこと」
・P18「保育士試験合格者が、保育士として働く場合に求める条件や重視する点」
・P24「過去に保育士として就業した者が退職した理由」
【PDF】厚生労働省:指定保育士養成施設卒業者の内定先等に関する調査研究(令和元年度)
3.解決策:保育士求人に有効なコンテンツと対策
求職中の保育士が求めている具体的な内容をリストアップしてみました。保育士の求人活動において選ばれる園になるために必要な情報を提供できているか、具体的にチェックしてみましょう。なお、本記事の続編となるブログ記事では、これらの事例や文例をさらに詳しくお伝えする予定です。
保育士希望者が知りたい情報
園の保育理念・方針
こちらはすでに掲載している保育園が多いと思いますが、保育方針に加えて園の強み、例えば「英語クラスがある」、「自然との交流に力を入れている」、「はだし保育」、「地域との交流行事がさかん」などなど、一緒に働く保育士にも理解してほしいものは掲載しておきたいです。
職場の人間関係
直接的な表現は難しいですが、人間関係を感じ取ってもらえるものとしてはスタッフ紹介やブログなどがあげられます。どんな方が働いているかを垣間見ることができれば、就職を検討する保育士にとって安心材料となります。インタビューが難しい場合は、年齢構成や男女比率をグラフなどで表現し、雰囲気を使ってもらう方法もあります。
保育環境・福利厚生
動画や写真を駆使して、園舎や園庭、保育部屋などの紹介が有効です。大変そうに見えますが一度掲載してしまえば変更はほとんど必要ありません。有給休暇の取得実績や育児休業からの復帰率が高い場合は、割合を計算して表現することもできます。より具体的な数字を示すことで心配ごとを少しでも軽減しましょう。
仕事量・業務内容
保育士の一日の流れを示すことで、仕事量や実務内容を伝えることができます。シフト制、土日出勤、年間や月間のスケジュールなども一緒にまとめてみましょう。持ち帰り残業を減らす取り組みをしている保育園などは、ぜひそういった取り組みも表明しましょう。
やりがい、喜び
子どもと過ごす中で感じた喜び、保護者からもらった嬉しい一言など、保育士をしていて感じる幸せをぜひ伝えましょう。スタッフの言葉としてインタビューやブログという形で伝えるとよりリアルな言葉として響きます。
給与額の提示
派遣や紹介会社では給与を明確に提示しています。いくらホームページで求人をしていても、情報が不明瞭だったり肝心な情報がなければ、確実なルートからエントリーされてしまいます。
既存職員の給料との兼ね合いなどもあるでしょうし課題は多いですが、直接採用を目指していくには多少の幅をもたせてもできるだけ検討のための材料を出していくといった取り組みが必要です。
経験不足をフォローする取組み
厚生労働省の資料によれば、新卒の6割が「保育士として働くことへの不安」を抱えています。これまでピックアップした情報以外に、以下のような不安を払拭する取り組み、研修や対策を行っている場合は、ぜひホームページで紹介しましょう。
- 障がいのあるお子さんへの支援
- 保育や子育てに関する最新事情
- 食育やアレルギーへの対応
- 安全管理や事故防止
- 感染症対策
●引用元サイト・資料
【PDF】厚生労働省:保育士の現状と主な取組(令和2年9月17日)
・P19「保育士試験合格者が、保育士として働くことへの不安について」
選ばれる保育園になるためのホームページ活用
「本当に知りたい情報は人材派遣・紹介会社を介さないと得られない」という流れを断ち切り、直接エントリーをしてもらうように「多くの人が見てくれるホームページで十分な情報を伝えていく」という方向に変えていくというのが、地道な改善策の一つとなりそうです。これまでに上げた内容が十分伝えられているのか、ぜひこれを機に見直してみましょう。
派遣会社・紹介会社は上手に使う
費用面ではマイナスですが、場合によっては真摯な対応によりいいご縁があったという声も聞かれます。利用を緊急時や短期スタッフ採用時にとどめるなど、利用シーンを見極めて導入する必要があります。また、会社によっては紹介した人材が一定期間内に自己都合で退職した場合に手数料の返金請求が可能な場合があるようなので、現状ではリスク回避策として割り切って利用するという考え方もあるでしょう。
さいごに
社会福祉施設のために準備された公費の用途が変わってきている現状、常に人材不足であるというのに自力での保育士求人活動が不利な状況に陥っていることをまずは広く知ってもらうことと、保育士を希望する方々にもこのことを伝えたいという思いがありました。
直接採用が実現することによって保育園のために有効に使える予算が増えれば、施設はもちろん、保育士への還元にもつながります。現状から抜け出すことは容易なことではありませんが、少しでもヒントが提供できていれば幸いです。
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