会計/社会福祉法人制度
年度末理事会の準備と実施
2024/02/02
社会福祉法人においては、年度末の3月に今年度の補正予算や次年度の事業計画・当初予算などの承認を得るために理事会を開催されるケースが多いかと思います。
今回は年度末の理事会の準備と実施にあたってのスケジュールや必要な作業、注意点などについてご説明します。
更新 2023.02.03
初回投稿 2022.02.18
1.年度末理事会のスケジュール
理事会開催にあたり、議案書やその添付資料の作成など必要な作業が多々ありますのでスケジュールをしっかり立てて準備を行うことが肝心です。
年度末理事会の時期はおおよそ法人様で決まっていることが多いため、必要な作業をリスト化した上で必要な作業を開催予定日から逆算しスケジュールしておくとよいかと思います。
作業内容のリスト化とスケジュールの例
日付・期限 | 作業内容 | 備考 |
---|---|---|
3月1日(火) | 当年度補正予算作成 | |
次年度事業計画作成 | ||
次年度当初予算作成 | ||
就業規則改定案作成 | ||
職務執行状況報告書作成 | ||
3月3日(木) | 理事会招集通知作成 | |
理事会議案書作成 | ||
3月7日(月) | 理事会招集通知・議案書発送 | 開催日から中7日間必要(定款による) |
理事会議事録下書き作成 | ||
3月15日(火) | 理事会開催 | 決議事項等 ・当年度補正予算 ・次年度事業計画 ・次年度当初予算 ・職務執行状況報告 ・指導監査結果及び対応の報告 |
理事会議事録作成 | 議事録署名人の記名押印 | |
3月16日(水) | 理事会議事録の備え置き | 主たる事務所に10年間 |
Excelなどで理事会開催日から日付を逆算できるようにしておくと管理がしやすいかと思います。
●00_年度末理事会スケジュール.xlsx 記事の最後のリンクよりダウンロード申込ができます。
2.議案書等の作成
スケジュールを作成したら議案書や添付資料などを作成しましょう。
議案と添付資料の作成
年度末理事会の際、定期的に議案となるものを挙げています。
当年度補正予算書
会計システムなどで作成した補正予算書のほか、必要に応じて決算見込書や詳細な計算資料も作成します。
▶保育園・こども園向けの補正予算の作成方法はこちら
次年度事業計画書・当初予算書
予算は、法人で作成する事業計画の資金的な手当をするために事業計画と一体的に作成するものです。会計システムなどで作成した当初予算書のほか、必要に応じて詳細な計算資料も作成します。
事業計画書に記載すべき内容は以下のようなものが考えられます。
- 基本方針
- 重点実施項目
- 実施する事業とその実施体制など
- 予定利用人数
- 職員体制
- 行事計画
- 施設・設備整備
▶保育園・こども園向けの当初予算・事業計画書の作成方法はこちら
就業規則改定案
法改正や給与改定などにより、次年度から就業規則を改定されることが多いかと思います。就業規則変更届に添付する新旧対照表などをベースに就業規則改定案を作成されるとよいかと思います。
▶年度替わり労務管理ウェビナーで詳しく解説
職務執行状況報告書
前回理事会開催から現在までの理事長の職務執行状況を報告する必要がありますので、職務執行状況報告書のほか、必要に応じて補足資料を作成します。
年度末時理事会の時点で報告すべき内容については以下のようなものが考えられます。
- 事業報告
- 定款等で定めた理事長専決事項に関する報告 ※以下例
- 「施設長等の任免その他重要な人事」を除く職員の任免
- 職員の日常の労務管理・福利厚生に関すること
- 債権の免除・効力の変更のうち、当該処分が法人に有利であると認められるもの、その他やむを得ない特別の理由があると認められるもの ただし、法人運営に重大な影響があるものを除く。
- 設備資金の借入に係る契約であって予算の範囲内のもの
- 建設工事請負や物品納入等の契約のうち次のような軽微なもの
- 日常的に消費する給食材料、消耗品等の日々の購入
- 施設設備の保守管理、物品の修理等
- 緊急を要する物品の購入等
- 基本財産以外の固定資産の取得及び改良等のための支出並びにこれらの処分 ただし、法人運営に重大な影響があるものを除く。
- 損傷その他の理由により不要となった物品又は修理を加えても使用に耐えないと認められる物品の売却又は廃棄 ただし、法人運営に重大な影響がある固定資産を除く。
- 予算上の予備費の支出
- 入所者・利用者の日常の処遇に関すること
- 入所者の預り金の日常の管理に関すること
- 寄付金の受入れに関する決定 ただし、寄付金の募集に関する事項及び法人運営に重大な影響があるものを除く。
- 予算の流用に関する報告
- 指導監査に関する報告
その他の決議事項等
ここまで年度末理事会の際に定期的に議案となるものを挙げてきましたが、他にも理事会で決議が必要な事項がある場合は議案に組み入れ、必要な資料を作成しましょう。
理事会での決議が必要な事項は以下のとおりです。
年度末理事会の場合だと、次年度からの理事長や施設長の交代や組織変更などが追加議案として挙げられるかと思います。
- 評議員会の日時及び場所並びに議題・議案の決定
- 理事長及び業務執行理事の選定及び解職
- 重要な役割を担う職員の選任及び解任
- 従たる事務所その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
- 内部管理体制の整備(特定社会福祉法人のみ)
- 競業及び利益相反取引の承認
- 計算書類及び事業報告等の承認
- 役員、会計監査人の責任の一部免除(定款に定めがある場合に限る。)
- その他重要な業務執行の決定(理事に委任されていない業務執行の決定)
議案書のまとめ
議案とその添付資料を作成した後は、表紙や見出しを付けて議案書としてまとめましょう。ご説明した資料は記事の最後でダウンロード申込ができます。
● 01_議案書表紙等.docx
● 02_補正予算書.pdf
● 03_事業計画書.xlsx
● 04_当初予算書.pdf
● 05_就業規則改定案.docx
● 06_01_職務執行状況報告書.docx
● 06_02_事業報告書.xlsx
● 06_03_指導監査結果報告書.docx
● 07_議案書例.pdf
3.理事会招集時の注意点
理事会招集通知
議案書を作成した後は、理事会招集通知書を作成します。定款の定めにもよりますが、一般的には理事会の招集は理事長が行うケースが多いかと思います。
理事会招集通知書に議案書を添付し、理事、監事の全員に発出します。発出には郵送等のほか、電子メールでの招集も可能なため招集通知書等をファイル添付して送信されるのもよいかと思います。評議員会の場合には、電子メールで送信する場合は評議員の承諾が必要となりますが、理事会の場合は承諾は必要ありません。
招集において、招集通知書への議案の記載や、議案書の添付などは必須ではありませんが、理事会当日の審議をスムーズに進めるためにも招集の時点で記載、添付しておくのが望ましいかと思います。
また、定款の定めにもよりますが招集通知書の発出日から開催日までは中7日間の期間を設ける必要があります。
理事会招集通知の省略
理事会は招集通知を省略して開催することも可能です。
ただし、年度末理事会は緊急的なものではないかと思いますので、省略せずに招集通知をすることが一般的かと思います。
招集通知を省略して理事会を開催する場合には、理事及び監事全員の同意が必要となります。
同意書を取る、又は理事会の議事録に当該同意があった旨を記載する等、同意の証拠を書面で保存するようにしましょう。
理事会招集時の注意点まとめ
- 招集通知は、理事及び監事の全員に期限までに発出することが必要
- 招集通知を省略する場合には、理事及び監事全員の同意が必要
ご説明した資料は記事の最後でダウンロード申込ができます。
● 08_理事会招集通知書.docx
● 09_理事会招集手続省略に関する同意書.docx
4.理事会開催時の注意点
議事の進行
理事会の当日は、議案書に基づき議事を進行していきます。
議長を選定し、以下の内容を確認した上で議事を進行し、各議案の決議と理事長の職務執行状況報告を行っていきましょう。
- 決議事項に特別の利害関係を有する理事がいないか
- 議決に加わることができる理事の過半数が出席しているか
- 定款で過半数を超える割合を定めた場合はその割合
決議には出席した理事の過半数の賛成が必要となります。
なお、参加していない理事の書面による議決権の行使はできません。
理事会議事録の作成
審議とあわせて議事の経過の要領及びその結果を議事録に残していきます。
通常は理事長が議長となるケースが多いかと思いますので、理事会前にあらかじめ議事録の下書きを作成しておくと議事の進行と議事録の記載がスムーズに進むかと思います。議事録に記載が必要な内容は以下のとおりです。
- 理事会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない理事、監事又は会計監査人が理事会に出席した場合における当該出席の方法(例:テレビ会議)を含む。)
- 理事会が次に掲げるいずれかに該当するときは、その旨
- 招集権者以外の理事が招集を請求したことにより招集されたもの
- 招集権者以外の理事が招集したもの
- 監事が招集を請求したことにより招集されたもの
- 監事が招集したもの
- 理事会の議事の経過の要領及びその結果
- 決議を要する事項について特別の利害関係を有する理事があるときは、当該理事の氏名
- 次に掲げる規定により理事会において述べられた意見又は発言があるときは、その意見又は発言の内容の概要
- 競業又は利益相反取引を行った理事による報告
- 理事が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときの監事の報告
- 理事会において、監事が必要があると認めた場合に行う監事の意見
- 理事長が定款の定めにより議事録署名人とされている場合の、理事長以外の出席した理事の氏名
- 理事会に出席した会計監査人の氏名又は名称(監査法人の場合)
- 議長の氏名(議長が存する場合)
また、議事録には署名又は記名押印が必要となります。必要な署名又は記名押印は以下のとおりです。
- 法律上 出席した理事及び監事全員の署名又は記名押印
- 定款に定めた場合 出席した理事長と監事全員の署名又は記名押印
- 署名=自筆による氏名 / 記名押印=自筆以外の氏名及び押印
決議の省略
決議を省略できる条件
以下の場合には、理事会の決議を省略することが認められています。
- 定款に決議の省略についての定めがあること
- 理事全員の同意の意思表示があること
- 監事が当該提案について異議がないこと
定款に定めがない場合は省略することはできません。定めがない場合、今後もコロナ禍等で理事会を開催することが難しい場合もあると思いますので定款変更も検討をされるとよいかと思います。
提案書を発出し、同意等を得る必要があります。同意や異議がないことの意思表示は書面又は電磁的記録により行う必要があります。理事及び監事の全員の同意書等を取る等、同意の証拠を書面で保存するようにしましょう。
なお、理事長職務執行状況報告については省略ができず、実際に開催された理事会において報告を行う必要があります。
ただし、コロナ禍においてやむを得ず年度内に理事会を開催し、当該報告を行うことが困難な場合、所轄庁が当該法人の指導監査を行うに当たっては、当該報告の時期の取扱いにつき、柔軟に対応することという通知が発出されていますので、次回の実際の理事会時に報告を行う等の対応が可能かと思います。
決議を省略した場合の議事録
決議を省略し、理事会を開催しなかった場合でも議事録の作成が必要です。
議事録に記載が必要な内容は以下のとおりです。
- 理事会の決議があったものとみなされた事項の内容
- 1の事項の提案をした理事の氏名
- 理事会の決議があったものとみなされた日
- 議事録の作成に係る職務を行った理事の氏名
この他、職務執行状況報告以外の理事、監事等の報告事項を省略した場合もその事項を記載する必要があります。また、議事録には議事録作成者の署名又は記名押印が必要となります。通常は理事長が議事録作成者となります。
理事会議事録の備え置き
議事録は、理事会の日から10年間、書面又は電磁的記録を主たる事務所に備え置く必要があります。
また、理事会の決議を省略した場合には、理事及び監事の全員の同意書等も議事録と同様に10年間の備え置きが必要です。
理事会開催時の注意点まとめ
- 理事の過半数が出席していること
- 出席した理事の過半数の賛成で決議をしていること
- 必要事項を記載した議事録を作成すること
- 議事録に必要な署名又は記名押印をしていること
- 決議の省略を行う場合は、理事及び監事全員の同意書等を取ること
- 決議の省略を行った場合でも、必要事項を記載した議事録を作成すること
ご説明した資料は記事の最後でダウンロード申込ができます。
● 10_理事会議事録.docx
● 11_01_理事会決議に関する提案書_理事用.docx
● 11_02_理事会決議に関する提案書_監事用.docx
● 12_01_理事会決議に関する同意書_理事用.docx
● 12_02_理事会決議に関する確認書_監事用.docx
● 13_理事会議事録_決議省略用.docx
5.資料ダウンロード
以上、社会福祉法人における年度末理事会の準備と実施の際に押さえておくべきポイントをチェックしてきました。
この記事でご紹介した議案書例などのファイルは、以下のバナーからお申込みいただければ無料でダウンロードできます。ぜひ編集してご活用いただければ幸いです。
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