保育ICT
共同親権と園行事参加への対応
2026/10/01
2026年4月から、離婚後の親権についてこれまでの「単独親権」だけでなく、「共同親権」を選択できるようになりました。これにより「別居親からの園行事への参加希望」など、実務上での新たな対応課題が増えると予想されます。
今回はこども家庭庁が紹介している資料と法務省のQ&A資料をもとに、保育施設に関係するポイントを整理してみます。
1.共同親権とは
共同親権とは、離婚した後も父母の両方が親権者になることができる制度です。
これまでは離婚すると父か母のどちらか一方だけが親権を持つ「単独親権」でしたが、民法改正により2026年4月から「共同親権」か「単独親権」かを選べるようになりました。
厚生労働省が公表した2026年4月分の人口動態統計によれば、親が離婚した未成年の子どものうち、父母双方が親権を持つ子どもは24.7%でした。改正民法の施行後初めて公表された月報で、実際に一定数の子どもが共同親権の対象となっていることが分かります。
何が変わるの?
共同親権を選んだ場合、子どもの生活に大きな影響を与える事項については父母が協力して判断することが原則となります。
- 子どもの転居
- 進学先の決定
- 心身に重大な影響を与える医療
一方、日常的なことについては、父母のどちらか一方が単独で判断できます。
- 食事や服装、習い事など
- 短期間の観光旅行
- 心身に重大な影響を与えない医療
●引用元サイト・資料
政府広報オンライン 離婚後も「共同親権」が選択可能に。改正された子育てに関するルール
厚生労働省 人口動態統計月報(概数)(令和8(2026)年4月分)
2.保育園が直面する課題
実際の園運営では、普段やりとりがない別居親からご要望が寄せられたり、同居親から別居親への対応について依頼を受けるというケースが考えられます。
- 園の行事に参加したい
- 園だより、写真販売を見たい
- 子どもの様子を知りたい
- 同居親から、別居親へ子どもの情報を提供しないように言われる
頻度が高いと予想される別居親の園行事参加等への対応については、文科省で作成された資料「別居親の学校・園行事参加等に関する対応マニュアルの例」がこども家庭庁にて公開されていますので、その内容にそって確認していきます。
3.別居親の園行事参加等への対応
基本的には別居親権者の行事参加は認める
まず、前提として「別居親(親権者)の参加は原則として認める」とされています。「共同親権だから必ず参加できる」でもなければ、「別居親だから参加できない」でもありません。子どもの安全や園運営への影響を踏まえた個別判断が求められます。なお、資料では「例外的な参加制限の必要性については校・園長が組織的に判断する」とされています。
では実際に行事参加を打診された場合の流れを見てみましょう。
1:接近禁止命令等を把握【していない】場合
- 父母間の協議の有無を確認
- 協議されて【いる】場合
認識が一致 → 協議結果に基づいて対応
認識が一致しない → 再協議を依頼 - 協議されて【いない】場合
同居親に接近禁止命令や協議の有無を確認
接近禁止命令等がある場合は関係機関に確認の上対応 - 接近禁止命令等がなく、特段の事情もない場合は参加を認める
2:接近禁止命令等を把握【している】場合
- 同居親に状況を相談する
- 必要に応じて警察等の関係機関と情報共有
参加制限を検討する例
- 過去に口論、罵声、威圧的言動、無断撮影といったトラブルがあった
- 父母同士が接近すると危険がある(2メートル以内の接触が不可避など)
- 会場の制約で座席や動線の分離が困難
- 複数の親族・知人を伴う等、運営に支障をきたす恐れが高い
- 同居親や子どもから強い心理的負担・安全面への不安が訴えられている
事前に園がしておけること
行事参加の申出があった際に慌てないよう、園として準備しておきたいことを挙げます。また、保護者から安全面への配慮や特別な事情について相談を受けた場合に、情報を共有できる体制を整えておくことも重要です。
相談・申請のルールを整える
- 行事参加希望の申請方法を決定・・・書面、問合せフォーム
- 担当窓口の設置・・・対応する担当者の決定
- 具体的な内容検討・・・行事の何日前まで受け付ける等
保護者へ向けた声がけ
行事参加について配慮が必要な場合は、余裕をもって事前相談をお願いする旨を伝えておくとよいです。
対応記録を残す
資料では「別居親の氏名や対応内容を記載した名簿の作成」が例示されていますが、実際の運用では以下のような内容を記録し園内で共有しておくとよいでしょう。
- 申出日時
- 相談内容
- 園の対応
- 父母とのやり取り
●引用元サイト・資料
文科省作成・こども家庭庁掲載 別居親の園行事参加等への対応についてPDF
4.各種手続きへの影響
入園手続き等の書類、保育認定、保育料などについては「影響はない」と説明されているので、共同親権になったことで「父母双方の署名が必要になる」、「保育料が変更となる」といった新たな手続きは示されていません。全文は法務省の引用元をご参照ください。
入園に係る手続等への影響
保護者は「親権を行う者、未成年後見人その他の者で、子どもを現に監護する者」と定められているため、離婚後の父母双方が親権者となった場合でも、監護の実態を踏まえて判断する現行の取扱いに影響が及ぶものではない(Q3の2-1から要約)とされています。
利用料への影響
幼稚園、保育所、認定こども園等を利用する3歳から5歳児までは、全世帯を対象に無償化しているため影響なし、0歳から2歳児までについては、市町村が各家庭の事情を踏まえた上で保育料の算定を行っており、監護の実態を踏まえて判断する現行の取扱いに影響が及ぶものではない(Q3の2-2から要約)とされています。
●引用元サイト・資料