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2026年〈令和8年〉1月以降の法改正について、おもに社会福祉施設や保育施設の労務管理に必要な内容をまとめました。就業規則の変更や各種届出などが必要になるため、早めの準備が必要です。

1.年金制度改正

2025年〈令和7年〉6月13日に年金制度改正法が成立したことを受け、2026年〈令和8年〉から段階的に制度変更が実施されます。

本法については社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化を図る観点から、働き方や男女の差等に中立的で、ライフスタイルや家族構成の多様化を踏まえた年金制度を構築するとともに、所得再配分の強化や私的年金制度の拡充等により、高齢期における生活の安定を図るためのものとされています。

ここでは年金制度改正法のうち、保育施設での管理面で必要となる改正内容についてご説明します。

社会保険の加入対象の拡大

短時間労働者の加入要件(賃金要件、企業規模要件)が段階的に撤廃され、社会保険の加入対象が拡大されます。

賃金要件の撤廃

いわゆる年収106万円の壁(月額88,000円)の撤廃が行われます。
撤廃の時期は2025年〈令和7年〉6月から3年以内とされています。

企業規模要件の撤廃

企業規模要件は現在の51人以上から、以下の通り段階的に撤廃されます。

  • 2027年10月:36人以上
  • 2029年10月:21人以上
  • 2032年10月:11人以上
  • 2035年10月:1人以上

企業規模要件に該当しない場合の社会保険の加入条件は従来通りです。

  • 常時雇用されている従業員
  • 週の所定労働時間および月の所定労働日数が常時雇用されている従業員の4分の3以上である者(およそ週30時間)

加入対象の拡大スケジュールと加入対象者

賃金要件と企業規模要件撤廃のスケジュールと社会保険加入の対象者をまとめました。

  • 2024年〈令和6年〉10月以降(現在)
    • 週の所定労働時間が20時間以上
    • 賃金が月額8.8万円以上
    • 従業員数51人以上の企業に勤務している
    • 学生でない
  • 2027年〈令和9年〉10月以降
    • 週の所定労働時間が20時間以上
    • 賃金が月額8.8万円以上(賃金要件が撤廃されていない場合)
    • 従業員数36人以上の企業に勤務している
    • 学生でない
  • 2029年〈令和11年〉10月以降(賃金要件が撤廃されている場合)
    • 週の所定労働時間が20時間以上
    • 従業員数21人以上の企業に勤務している
    • 学生でない
  • 2032年〈令和13年〉10月以降(賃金要件が撤廃されている場合)
    • 週の所定労働時間が20時間以上
    • 従業員数11人以上の企業に勤務している
    • 学生でない
  • 2035年〈令和15年〉10月以降(賃金要件が撤廃されている場合)
    • 週の所定労働時間が20時間以上
    • 従業員数1人以上の企業に勤務している
    • 学生でない

被保険者とならない方

以下の方は賃金要件と企業規模要件にかかわらず被保険者とはなりません。

  • 日々雇い入れられる人。1か月を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から被保険者となる。
  • 2か月以内の期間を定めて使用される人。
  • 当初の雇用期間が2か月以内であっても、当該期間を超えて雇用されることが見込まれる場合は、契約当初から被保険者となる。
  • 所在地が一定しない事業所に使用される人。いかなる場合も被保険者とならない。
  • 季節的業務(4か月以内)に使用される人。継続して4か月を超える予定で使用される場合は、当初から被保険者となる。
  • 臨時的事業の事業所(6か月以内)に使用される人。継続して6か月を超える予定で使用される場合は、当初から被保険者となる。

社会保険の加入拡大の対象となる短時間労働者への支援

  • 3年間事業主の追加負担により、社会保険料の負担を軽減できる特例的な措置
  • 事業主が追加負担した保険料は、国などがその全額を支援
    • 具体的な事務処理は2026年1月頭時点では発表されていない
標準報酬月額
(年額換算)
労働者の負担
8.8万(106万)本来の負担の25/50
9.8万(118万)本来の負担の30/50
10.4万(125万)本来の負担の36/50
11万(132万)本来の負担の41/50
11.8万(142万)本来の負担の45/50
12.6万(151万)本来の負担の48/50

※3年目は軽減割合を半減

必要な対応

  • 1年単位の労働契約の場合、10月以降の社会保険適用を踏まえた労働契約書の作成(2026年〈令和8年〉10月から賃金要件が撤廃された場合)
    • 適用する保険を記載する場合、4月~9月は社会保険なし、10月以降は社会保険あり など
    • 3年間事業主の追加負担により、社会保険料の負担を軽減できる特例的な措置を実施する場合は、措置の対象期間、軽減割合を表記(法改正による支給期間変更可能性の旨も)
  • 就業規則の変更
    • 社会保険適用の要件を規定している場合は要件を変更(2026年〈令和8年〉10月から賃金要件が撤廃された場合)
    • 3年間事業主の追加負担により、社会保険料の負担を軽減できる特例的な措置を実施する場合は、措置の対象期間、軽減割合を表記(法改正による支給期間変更可能性の旨も)
  • 社会保険の資格取得手続(2026年〈令和8年〉10月から賃金要件が撤廃された場合)
  • 給与計算システムの設定変更
    • 10月以降の社会保険加入者の社会保険が徴収されるように設定(2026年〈令和8年〉10月から賃金要件が撤廃された場合)
    • 3年間事業主の追加負担により、社会保険料の負担を軽減できる特例的な措置を実施する場合は、軽減割合を設定

在職老齢年金制度の見直し

年金を受給しながら働く高齢者の賃金と老齢厚生年金の合計が基準を超えた場合、老齢厚生年金が減額されます。

この基準が月50万円から62万円に引き上げられることで、年金を減額されにくくなり、より多く働けるようになります。

在職老齢年金制度の見直し

必要な対応

  • 今回の改正で基準額が62万円に引き上げられることを周知し、必要に応じて働き控えの解消を促すことになります。

●引用元サイト・資料〈厚生労働省〉

年金制度改正法が成立しました

2.雇用環境・均等関係の改正

多様な労働者が活躍できる就業環境の整備を図るため、ハラスメント対策の強化、女性活躍の推進のための措置を講じることとされました。

ハラスメント対策強化

2026年〈令和8年〉10月より、カスタマーハラスメントや、求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防止するためにの雇用管理上必要な措置が義務化されます。

カスタマーハラスメント対策の義務化

  • カスタマーハラスメントの定義 以下の3つの要素をすべて満たすもの
    1. 顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行う、
    2. 社会通念上許容される範囲を超えた言動により、
    3. 労働者の就業環境を害すること
  • 事業主が講ずべき具体的な措置の内容等については、今後、指針により示される予定
    • 事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
    • 相談体制の整備・周知
    • 発生後の迅速かつ適切な対応・抑止のための措置

求職者等に対するセクハラ対策の義務化

  • いわゆる就活セクハラ
  • 事業主が講ずべき具体的な措置の内容等については、今後、指針により示される予定
    • 事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
    • 相談体制の整備・周知
    • 発生後の迅速かつ適切な対応(例:相談への対応、被害者への謝罪等)

必要な対応

  • 今後示される指針にあわせ、講じる対策を規程やマニュアル等として作成し、周知・実施します。

●引用元サイト・資料〈厚生労働省〉

ハラスメント対策・女性活躍推進に関する改正ポイントのご案内【PDF】

女性活躍の更なる推進に向けた改正

男女間賃金差異及び女性管理職比率の情報公表

  • 2026年〈令和8年〉4月より、従業員数101人以上の企業は、男女間賃金差異および女性管理職比率の情報公開が義務化

女性活躍推進法の有効期限の延長

  • 令和8年3月31日までとなっていた法律の有効期限が2036年〈令和18年〉3月31日までに延長

必要な対応

  • 女性の活躍推進企業データベース等での公表

●引用元サイト・資料〈厚生労働省〉

男女間賃金差異と女性管理職比率の公表義務が拡大【PDF】
女性の活躍推進企業データベース

3.医療保険関係の改正

こども未来戦略「加速化プラン」で定められた子育て支援の拡充のため、子ども・子育て支援金制度が2026年〈令和8年〉4月より段階的に実施されます。

他にも協会けんぽにおいては出産手当金や傷病手当金の電子申請サービスの開始や、被扶養者認定方法の変更などの対応も必要となります。

子ども・子育て支援金の徴収

子ども・子育て支援金は、医療保険を通じて2026年〈令和8年〉4月分保険料より拠出されます。

支援金額

支援金額は医療保険ごとに定められ、2026年度〈令和8年度〉の支援金額の推計(平均月額)は以下とされています。

  • 被用者保険(協会けんぽ・健康保険組合・共済組合) 被保険者一人当たり約550円
  • 国民健康保険 一世帯当たり約300円
  • 後期高齢者医療制度 被保険者一人当たり約200円

被用者保険の場合、実際に被保険者が負担する2026年度〈令和8年度〉の支援金額(月額)は以下の通りです。

  • 標準報酬月額×支援金率(0.23)÷2 ※半分は企業が負担

必要な対応

2026年〈令和8年〉4月分から被保険者ごとの支援金額を計算して徴収していく必要があるため、被保険者には事前に説明を行っておくのが望ましいかと思います。

また、徴収する際の具体的な項目はまだ発表されていませんが、健康保険料に上乗せ、子ども・子育て支援金のような別項目での徴収が考えられます。給与計算システムをご利用されている場合、子ども・子育て支援金の徴収を行うためのバージョンアップが行われることになるかと思います。

●引用元サイト・資料〈厚生労働省〉

子ども・子育て支援金制度について

電子申請サービス開始

全国健康保険協会(協会けんぽ)において、これまで紙の申請書で行われていた出産手当金や傷病手当金を始めとする各種手続きについて、2026年〈令和8年〉1月13日よりパソコンやスマートフォンを利用する電子申請サービスが開始されます。

電子申請サービスの利用者

電子申請サービスのは被保険者自身がマイナンバーによる認証を行ったうえで利用するのが基本であり、企業側の担当者が利用するサービスとはなっていません。

事業主が証明する勤務状況や給与支払状況などは企業側で作成し、紙の書類等で被保険者に提供し、被保険者がそれを電子申請サービスにアップロードして申請する必要があります。

このため、被保険者自身で申請がすべて完結するものではないこと、被保険者自身が申請の知識を持ち合わせていないことなどにより当面は利用が難しいのではないかと思われます。

必要な対応

被保険者自身が電子申請を行うことのハードルが高いことを踏まえ、以下の整備、案内を行うことが望ましいかと思います。

  • 事業主が証明する勤務状況や給与支払状況などの書類整備
  • 被保険者自身で申請できるようにするためのマニュアルの整備
  • 従来通りの紙申請の案内

●引用元サイト・資料〈協会けんぽ〉

電子申請サービスについて

被扶養者認定における年間収入の取扱い変更

被扶養者認定における「年間収入」の取扱いが整理され、2026年〈令和8年〉4月より適用されることになりました。

なお、以下の認定対象者の収入額の基準についての変更はありません。

認定対象者の年間収入が130万円未満(60歳以上等の場合は180万円、19歳以上23歳未満の場合は150万円)であり、かつ、他の収入が見込まれず、

  1. 認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合には、被保険者の年間収入の2分の1未満
  2. 認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合には、被保険者からの援助に依る収入額より少ない

従来の取扱い

「年間収入130万等」は、認定対象者の過去の収入、現時点の収入または将来の収入の見込みなどから、今後1年間の収入の見込みにより判定

変更後の取扱い

「年間収入130万等」は、労働契約で定められた賃金から見込まれる年間収入により判定

判定に係る確認は以下とされています。

  • 労働条件通知書等の労働契約の内容が分かる書類の添付及び当該認定対象者に「給与収入のみである」旨の申立てを求めることにより確認すること
  • 具体的には、通知書等の賃金(諸手当・賞与含む)を確認し、年間収入が 130万円未満等である場合には、原則として被扶養者として取り扱うこと
  • なお、労働契約の更新が行われた場合や労働条件に変更があった場合には、当該内容に基づき被扶養者に係る確認を実施することとし、条件変更の都度、当該内容が分かる書面等の提出を求めること
  • 被扶養者の認定の適否に係る確認時において、当初想定されなかった臨時収入により、結果的に年間収入が130万円以上等の場合であっても、当該臨時収入が社会通念上妥当である範囲に留まる場合には、これを理由として、被扶養者としての取扱いを変更する必要はないこと。

必要な対応

被保険者より被扶養者の申請があった場合、認定対象者の労働条件通知書等の提出を求めることおよび認定対象者が給与収入のみであることの申立を求めることになります。

また、扶養の範囲内での就業を求める労働者の労働条件通知書等について、年間収入130万円未満等が明確になるように労働条件(特に所定労働時間、日数)を通知する必要があります。

なお、労働契約に明確な規定がなく労働契約段階では見込み難い時間外労働に対する賃金等は、被扶養者の認定における年間収入には含まないこととされています。

●引用元サイト・資料〈厚生労働省〉

労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて【PDF】
労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いに係るQ&Aについて【PDF】

4.その他の法改正等

高年齢労働者の労災防止措置(努力義務)

2026年〈令和8年〉4月より高年齢労働者の労災防止が努力義務化されました。背景としては以下が挙げられます。

背景として以下2つが挙げられています。

  • 休業4日以上の死傷者数は近年増加傾向にあり、この要因として、高年齢労働者の労働災害の増加が挙げられる
  • 高年齢労働者は、他の世代と比べて、労働災害の発生率が高く、災害が起きた際の休業期間が長い

必要な対応

エイジフレンドリーガイドラインをもとに、講じる対策を規程やマニュアル等として作成し、周知・実施します。

  1. 安全衛生管理体制の確立
  2. 職場環境の改善
  3. 高年齢労働者の健康や体力の状況の把握
  4. 高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応
  5. 安全衛生教育

現時点では努力義務ではありますが、数年後に義務化が想定されるため、徐々に対応していくのが望ましいです。

●引用元サイト・資料〈厚生労働省〉

高年齢労働者の安全衛生対策について
エイジフレンドリーガイドライン【PDF】

治療と就業の両立支援措置(努力義務)

2026年〈令和8年〉4月より治療と就業の両立支援措置が努力義務化されました。背景としては以下が挙げられます。

  • 労働者の高齢化や疾病リスクの増加を背景に、治療を受けながら就業を継続する労働者は今後さらに増加すると見込まれる
  • このため、事業場においては、疾病を抱える労働者が安心して治療と仕事を両立できるよう、必要な支援を行うことが重要

必要な対応

事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドラインをもとに、講じる対策を規程やマニュアル等として作成し、周知・実施します。

  1. 両立支援を行うための環境整備
  2. 両立支援の進め方
  3. 特殊な場合の対応

現時点では努力義務ではありますが、数年後に義務化が想定されるため、徐々に対応していくのが望ましいです。

●引用元サイト・資料〈厚生労働省〉

治療と仕事の両立について
事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン【PDF】

個人事業者等の業務上災害に関する報告制度の創設

2027年〈令和9年〉1月より個人事業者等の業務上災害が発生した場合には、災害発生状況などについて、厚生労働省に報告が必要となりました。詳細は、今後関連する法令等により示されることになっています。
保育施設の場合、個人の体操教室の講師等に業務を委託している場合に発生する可能性があります。

必要な対応

今後示される関連する法令等の手続に従い報告できるように災害時の情報を記録します。

●引用元サイト・資料〈厚生労働省〉

労働安全衛生法及び作業環境測定法 改正の主なポイントについて【PDF】

以上、2026年〈令和8年〉の法改正について、押さえておくべきポイントをチェックしてきました。

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