会計/社会福祉法人制度
収支計算分析表の記載方法〈私立保育所向け〉
2024/05/17
私立保育所において一定の条件に当てはまる場合に提出が必要となる「収支計算分析表」について、提出条件の確認、計算シートの利用方法、具体的な記入方法などを解説します。
更新 2023.5.18
初回投稿 2022.05.09
1.収支計算分析表の提出が必要な条件
以下のどれかに該当する心当たりがある場合は、収支計算分析表の提出が必要となります。詳細については経理等通知の該当箇所をご案内していますので、ご確認ください。
- 弾力運用内容の範囲を超える支出がある場合
- 委託費の使途範囲以外の支出がある場合
- 積立資産積立支出及び当期資金収支差額合計が、事業活動収入計(決算額)の5%相当額を超える場合
経理等通知 該当部分
5 委託費の経理に係る指導監督
(2)設置者から提出された計算書等が以下のいずれかに該当する場合については、別表6の収支計算分析表の提出を求め、「1 委託費の使途範囲」から「4 委託費の管理・運用」までに示された事項の遵守状況を確認すること。特に、「1 委託費の使途範囲」の(2)①から⑦までに掲げる要件が充足されているかどうかをはじめ入所児童の処遇の状況を十分に確認すること。
① 1の(4)による別表2の経費等への支出の合計額が改善基礎分を超えている場合
② 1の(5)による別表3及び別表4の経費等への支出の合計額が改善基礎分を超えている場合又は別表3及び別表5の経費等への支出の合計額が委託費の3か月分に相当する額を超えている場合
③ 保育所に係る拠点区分から、「1 委託費の使途範囲」から「4 委託費の管理・運用」までに定める以外の支出が行われている場合
④委託費に係る当該会計年度の各種積立資産への積立支出及び当期資金収支差額合計が、当該施設に係る拠点区分の事業活動収入計(決算額)の5%相当額を上回る場合
●引用元資料〈内閣府資料より〉
子ども・子育て支援法附則第6条の規定による私立保育所に対する委託費の経理等について
(平成30年4月16日改正)>5 委託費の経理に係る指導監督>(2)
2.保育所用・給付費内訳計算用Excelシートを使った計算
収支計算分析表 作成の流れ
収支計算分析表のベースは、お使いの会計システムから出力することができるかと思います。弊社システム「SERVE 財務会計」の場合、このように会計データから自動計算し収支計算分析表を出力できますが、黄色の部分は別途計算が必要です。計算に必要な情報は弊社で公開している計算シートを使い以下の手順で準備していきます。
1基本分単価マスタ、加算単価マスタを入力
2年間合計シートで年間の園児数を入力
3分析表用シートで確認し収支計算分析表に入力
保育所用・給付費内訳計算用Excelシート
計算用Excelシートは弊社Webサイトで公開しています。以下のリンク先にある「保育所用・給付費内訳計算用Excelシート」をお手元にご用意ください。
3.基本分単価マスタ・加算単価マスタの入力
基本分単価マスタの入力
まずは計算用Excelシートの「基本分単価マスタ」シートの黄色いセルに必要な情報を入力します。分園がある場合は本園とは分けて計算します。冒頭の処遇改善等加算のパーセンテージ内訳(基礎分と賃金改善要件分)から見ていきます。
画像例) 令和3年度、以下の場合の入力例
- 地域区分:その他地域
- 定員区分:81人から90人までの場合
基礎分の加算率
すべての施設が対象ですが、職員1人当たりの平均経験年数によって2~12%が適用されます。
以下のリンク先にある「令和〇年度私立保育所の運営に要する費用について」>6 処遇改善等加算Ⅰ(基礎分)をご参照いただくと、細かい区分を確認できますので、該当する%を入力します。
賃金改善要件分の加算率
賃金改善要求を満たす施設が対象で、平均経験年数11年未満の施設は6%、11年以上の施設は7%が加算されます。ただしキャリアパス要件に適合しない場合はこの6~7%から2%減算されますので、計算シートでは4~7%の間で該当する%を入力します。
以下のリンク先にある「施設型給付費等に係る処遇改善等加算について>第4 加算Ⅰの要件をご参照いただくと、細かい区分を確認できますので、該当する%を入力します。
基本分単価
例外的に年度の途中で単価が変わる場合を除き、通常は黄色枠のみ入力します。入力に必要な情報は以下のリンク先にある「令和〇年度公定価格単価表」>保育所をご参照いただき、該当する認定、定員、年齢区分に応じた金額を入力していきます。分園がある場合は下の欄に記入します。
加算単価マスタの入力
加算部分1
こちらも「基本分単価マスタ」シートと同様に「令和〇年度公定価格単価表」>保育所をご参照いただき、該当する園児数の欄にある数字を入力していきます。
例) 令和3年度、以下の場合の入力例
- 地域区分:その他地域
- 定員区分:81人から90人までの場合
入力時の注意点
分園の場合 | 初期値「10/100」のまま変更不要 |
定員を恒常的に超過する場合 | 超過が無い場合はシートの初期値 100/100のまま、超過がある場合は単価表の該当定員区分にある記載に従う。 例)91/100 ※定員区分:81人から90人までの場合 |
加算部分2
主任保育士専任加算など例外的に年度の途中で単価が変わる場合を除き、通常は黄色枠のみ入力します。処遇改善加算の人数は、配置基準、職員数などによって変わります。
以下の加算については、3月の欄にまとめて入力します。
- 除雪費加算
- 降灰除去費加算
- 高齢者等活躍促進加算
- 施設機能強化推進費加算
- 小学校接続加算
- 第三者評価受審加算
4.年間の委託費合計算出
次に年間委託費の合計金額を計算します。計算用Excelの「年間合計」というシートを使用します。こちらも黄色いセルに必要な情報を入力していきます。
各月の園児在籍数を黄色い欄に記入していくと、シート上方の欄に計算結果が反映されます。まったく同じデータを入力する場合は、コピー&ペーストを使用できます。
入力時の注意点
分園がある場合 | 51~54行目に分園の園児数を入力します。 |
広域入所園児がいる場合 | 90行目以降に同じ欄が複数用意されていますので、市町村ごとに分けて入力します。 |
内 副食費徴収免除対象人数 | 3歳以上児のうち、副食費徴収免除対象の園児数を入力します。 |
途中入所・途中退所の日割計算
途中入所や退所の園児がいる月は、「4月」~「3月」というシートにある「日割計算用」を使って一人分ずつ算出します。黄色の欄に該当園児の情報を入力し合計を算出します。
同シートの下段「日割入力用」欄に日割計算用で算出した数値を入力します。合計金額が合っているか確認しながら追記します。10名までの欄を設けてあります。
これで委託費の合計金額の算出は完了です。「年間合計」シートにある合計金額が年間の委託費になります。行政との計算方法の違いにより実際の委託費収入と合わない場合もございます。
5.分析表用シートへの入力
次に「分析表用シート」を開きます。こちらは先ほど利用した以下のリンク先にある「令和〇年度私立保育所の運営に要する費用について」をご参照いただき、該当する金額を入力します。不要なものは未入力のままでかまいません。
例) 令和3年度、以下の場合の入力例
- 地域区分:その他地域
- 定員区分:81人から90人までの場合
正しく入力できていれば、以下のようにシートの左下の合計金額と右下の合計金額が合致します。
6.収支計算分析表への入力
収支計算分析表は、可能な場合はお使いのシステムから出力します。ここではSERVE 財務管理の収支計算分析表を例にして解説します。
なお、収支計算分析表の体裁については、内閣府にて公開している「子ども・子育て支援法附則第6条の規定による私立保育所に対する委託費の経理等について」(経理等通知)のPDF、別表6をご参照ください。
資金収支計算書の金額をそのまま入力する箇所
以降説明のない科目については資金収支計算書の金額をそのまま入力します。SERVE 財務会計では黄色いセル以外の必要な箇所は基本的に自動で算出されます。
収入科目
1:委託費収入(改善基礎分を除く)
さきほど計算した「分析表用」のシートにある計算結果を参考に、以下の項目を入力します。委託費収入(改善基礎分を除く)の額は自動計算されます。
- 人件費(改善基礎分を除く)
- 事業費
- 管理費(改善基礎分を除く)
9:当期資金収支差額合計(欠損金)
当期資金収支差額合計がマイナスの場合はこちらに入力します。
10:委託費収入のうち改善基礎分
「年間合計」シートのAL列、41行目の値が委託費収入のうちの改善基礎分、年間合計金額にあたりますので、この値を入力します。
なお、「1:委託費収入(改善基礎分を除く)」の金額と「10:委託費収入のうち改善基礎分」を合算しても「賃金改善要件分」が含まれていないため、実際の委託費収入とは合いません。
11:国庫補助金事業に係る施設整備補助金収入
建物取得など、施設整備に係る補助金額を入力します。SERVE 財務会計では施設整備等補助金収入の金額が出力されます。
12:国庫補助金事業に係る設備整備補助金収入
固定資産購入など、設備整備に係る補助金額を入力します。通常は施設整備等補助金収入として計上する事が多いかと思いますが、保育事業の補助金として計上している場合は、補助時金事業収益のうち、固定資産購入などに対する補助金額を計上します。
13:22及び23の経費に係る積立資産取崩収入
土地、建物、構築物、器具及び備品取得支出等の施設の整備等の経費にかかる財源として積立資産を取り崩した場合に入力します。
支出科目
21:当期資金収支差額合計
当期資金収支差額合計がプラスの場合はこちらに入力します。
22:固定資産取得支出のうち施設の整備等に係る支出
土地、建物、構築物、器具及び備品取得支出等の合計額を入力します。
24:22及び23の経費に係る借入金利息支出
施設の整備等及び土地・建物賃借料支出に係る借入金がある場合、その利息支出を入力します。科目は支払利息支出が該当しますが、運営資金借入金等に係る利息やリース債務に係る利息がある場合はその額を除外して計上します。
26:22及び23の経費に係る積立資産支出
施設の整備等及び土地・建物賃借料支出に係る積立資産支出を計上します。科目は保育所施設・設備整備積立資産積立支出が該当しますが、修繕積立資産積立支出、備品等購入積立資産積立支出に計上した場合はその額を合わせて計上します。
その他
収支計算分析表の右欄「差引過不足額」の支出、収入の小計、合計欄は同額になっている必要はありません。
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以上、計算シートを用いた収支計算分析表の作成方法でした。所轄の行政により作成方法など細かい指示が出ている場合は、そちらもご参照頂ければと思います。
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