給与・労務
最低賃金変更に伴う対応ポイント
2024/08/21
厚生労働省より地域別最低賃金額の目安が発表されており、目安額50円の引き上げと過去最大の引き上げ幅となっています。
地域別最低賃金額については各都道府県の労働局のWebサイト等をご参照ください。
●引用元サイト・資料
厚生労働省:令和6年度地域別最低賃金額改定の目安について
例年通りだと各都道府県ともに10月初旬から改定となるケースが多いため、早めの準備ができるよう最低賃金の引き上げに伴う労務・給与計算上必要な処理をまとめてみました。
令和5年度最低賃金変更 2023.08.21
令和4年度最低賃金変更 2022.08.22
初回投稿 2021.08.23
1.現在の賃金額の確認
まずは現在の賃金額を確認し、最低賃金を下回っていないかを確認する必要があります。
特に月給および日給月給の場合は最低賃金を下回っていないか注意が必要です。月160時間の労働時間の場合、月間8,000円を超える引き上げとなるため、一番低い初任給額が最低賃金額を下回っていないかチェックする必要があるかと思います。
時給の場合
- 労働条件通知書・雇用契約書や給与計算システムの設定を確認
日給の場合
- 労働条件通知書・雇用契約書や給与計算システムの設定を確認
- 1時間あたりの金額の表示がない場合は、1日の所定労働時間で割って金額を算出
月給および日給月給の場合
- 労働条件通知書・雇用契約書や給与規程、給与計算システムの設定を確認
- 1時間あたりの金額は給与規程に基づき給与計算システム等で算出
例{(基本給+特殊業務手当+処遇改善手当)×12ヶ月}÷年間所定労働時間 など
以下の画像はSERVE 給与計算を元に説明をしています。処遇改善関連の支給項目追加の際に、1時間あたりの給与額算出の設定が正しく行われていないケースもありますので、この機会に給与規程と合わせて確認するとよいかと思います。
2.就業規則(給与規程)の変更・届出
現在の賃金額を確認し、最低賃金を下回っている場合は就業規則(※以後、給与規程)を変更し、届出を行う必要があります。
あまりないかと思いますが、時給や日給額を給与規程に定めている場合はその金額を変更する必要があります。
一般的には月給および日給月給の金額のみ俸給表などの形で規定しているケースが多いかと思いますので、最低賃金を下回る俸給表の金額を変更していきます。俸給表以外に1時間あたりの給与額に含める手当などがある場合は「 1.現在の賃金額の確認 」での計算で確認しながら金額の変更を行います。
「1級1号俸の160,000だと最低賃金を下回るため、165,000に変更」という例を元にご説明した場合、号俸や級の間の差額が大きさによって変更範囲が異なってきます(わかりやすいように諸手当を除いています)。
号俸間の差額が大きい場合
以下の例では、1級の部分のみ変更しても他の号俸・級との整合性上は特に問題ないかと思います。
変更前の俸給表
号俸 / 級 | 1級 | 2級 |
---|---|---|
1 | 160,000 | 190,000 |
2 | 170,000 | 200,000 |
3 | 180,000 | 210,000 |
4 | 190,000 | 220,000 |
変更後の俸給表
号俸 / 級 | 1級 | 2級 |
---|---|---|
1 | 165,000 | 190,000 |
2 | 170,000 | 200,000 |
3 | 180,000 | 210,000 |
4 | 190,000 | 220,000 |
号俸間の差額が小さい
以下の例の場合、1級の部分のみ変更しても他の号俸・級との整合性が取れなくなるため、全体的な金額の調整が必要となってきます。
変更前の俸給表
号俸 / 級 | 1級 | 2級 |
---|---|---|
1 | 160,000 | 180,000 |
2 | 165,000 | 185,000 |
3 | 170,000 | 190,000 |
4 | 175,000 | 195,000 |
変更後の俸給表
号俸 / 級 | 1級 | 2級 |
---|---|---|
1 | 165,000 | 185,000 |
2 | 168,000 | 190,000 |
3 | 173,000 | 195,000 |
4 | 188,000 | 200,000 |
給与規程をすぐに変更できない場合
給与規程の改定に理事会の承認が必要等の理由ですぐに対応できない場合、改定後に最低賃金改定月(10月など)に遡及して計算を行い、差額を支給する方法もあるかと思います。
その場合は差額計算が必要となってきますが、遡及計算をするタイミングによっては賞与計算も差額計算を行う等の対応も必要となってきますのでご注意ください。給与計算システムに昇給差額の計算機能があればそちらを利用されると計算がスムーズに行えるかと思います。
3.労働条件通知書・雇用契約書の変更
給与規程の変更まで終わりましたら、次に労働条件通知書や雇用契約書を変更後の金額で作り直し、職員との取り交わしを行います。月給および日給月給の場合で、辞令の交付のみ行っている場合は、同様に作り直し、交付を行います。
4.給与計算システムの変更
次に給与計算システムにて、給与額変更後の金額を個人ごとの支給額に反映させます。
最後に10月の給与計算にて給与額変更後の金額で正しく計算されているか確認します。
以上、 最低賃金の引き上げに伴う労務・給与計算上必要な処理のまとめでした。
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