給与・労務
労務関連法改正まとめ 2025年〈令和7年〉分
2025/01/06
2025年〈令和7年〉4月以降の法改正について、主に社会福祉施設や保育施設の労務管理に必要な内容をまとめました。就業規則の変更や各種届出などが必要になるため、早めの準備が必要です。
1.育児・介護休業法
育児・介護休業法は2025年〈令和7年〉年4月1日から段階的に施行されます。
- 2025年〈令和7年〉年4月1日施行 子の看護休暇・所定労働時間の制限対象拡大、介護離職防止のための個別周知・意向確認義務化 など
- 2025年〈令和7年〉年10月1日施行 3歳から小学校就学始期までの子を養育する労働者の柔軟な働き方を実現する措置(始業時刻等の変更、テレワーク等)及び労働者に対する個別周知と意向確認 など
就業規則の変更は4月施行と10月施行の2回分必要となります。10月施行分を4月に前倒しして対応するのもありかと思います。
保育園・こども園の場合、就業規則の変更については理事会を通す必要があるなど、事務負担が大きいので早めに準備をしておくのが望ましいです。
●引用元サイト・資料〈厚生労働省〉
育児・介護休業法 改正ポイントのご案内
2025年〈令和7年〉4月1日施行
子の看護等休暇
- 「子の看護休暇」から「子の看護等休暇」に改称
- 対象となる子を小学校3年生修了前に引き上げ
- 取得事由を感染症による学級閉鎖、入学式等に拡大
- 勤続雇用期間6ヶ月未満の労働者を労使協定で除外する仕組みの廃止
所定外労働の制限
- 対象を3歳未満の子を養育する労働者から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に拡大
- 時間外労働の制限(法定労働時間を超える労働)は従来より小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が対象
介護休暇
- 勤続雇用期間6ヶ月未満の労働者を労使協定で除外する仕組みの廃止
育児短時間勤務(3歳未満)
- 短時間勤務が困難な業務の従事者を労使協定で除外する場合の代替措置にテレワーク等を追加(努力義務)
- 育児休業を取得していない3歳に満たない子を養育する労働者に講じる努力義務の措置にもテレワーク等を追加
- 現在の代替措置は以下のうちいずれか
- 育児休業に関する制度に準ずる措置
- フレックスタイム制
- 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
- 保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与
介護のための措置
- 介護のための措置にテレワークの導入を追加(努力義務)
- 現在の措置は以下のうちいずれか
- 短時間勤務の制度
- フレックスタイム制
- 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
- 労働者が利用する介護サービスの費用の助成その他これに準ずる制度
介護離職防止のための個別周知・意向確認等の措置
- 個別周知・意向確認
- 介護に直面したことを申し出た労働者に対して、介護休業・介護両立支援制度等を周知し、制度利用の意向を確認
- 介護に直面する前の早い段階での情報提供
- 仕事と介護の両立支援制度を十分活用できないまま介護離職に至ることを防止するため、労働者が介護に直面する前の早い段階(40歳等)に、介護休業、介護両立支援制度等に関する情報提供を行う
- 介護休業、介護両立支援制度等を取得しやすい雇用環境整備
- 介護休業、介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるよう、研修や相談窓口設置等の措置を講じる
男性の育児休業取得率等の公表義務の企業要件引き下げ
- 男性労働者の育児休業取得率等の公表が労働者300人超1,000人以下の法人にも義務化されます。
2025年〈令和7年〉10月1日施行
柔軟な働き方を実現するための措置
3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に関して、以下の5つから2つ以上の措置を行う必要があります。
保育施設の場合、赤文字の箇所が現実的に対応しやすい措置かと思います。
なお、措置の決定にあたっては労働者の過半数組合等からの意見聴取の機会を設ける必要があります。
労働者は、事業主が行う措置から1つを選択して利用することができます。
- 始業時刻等の変更
- 早め、遅めのシフトに入らないような措置での対応も可能
- テレワーク等(10日以上/月)
- 原則、時間単位取得可能とする必要あり
- 保育施設の設置運営等
- 主な事業が保育施設の場合、労働者全員が希望すれば必ず入所できる措置等があれば選択できる可能性あり
- 養育両立支援休暇の付与(10日以上/年)
- 就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇
- 有給・無給は問わず
- 原則、時間単位取得可能とする必要あり
- 短時間勤務制度
- 3歳までは義務、3歳から小学校就学前までは2025年9月30日まで努力義務
柔軟な働き方を実現するための措置の個別周知・意向確認
- 3歳未満の子を養育する労働者に対して、子が3歳になるまでの適切な時期に、柔軟な働き方を実現するための措置として選択した制度等を個別に周知し、制度利用の意向を確認する必要があります。
仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の措置
- 労働者が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た時や、子が3歳になるまでの適切な時期に、子や各家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関する労働者の意向を個別に聴取する必要があります。
- 意向を聴取した労働者の就業条件を定めるにあたっては、個別に聴取した労働者の仕事と育児の両立に関する意向について、自社の状況に応じて配慮する必要があります。
- 育児・介護休業に基づく義務は対応必須、その他はできる限り配慮(義務ではない)
必要な対応
育児、介護のための個別周知・意向確認・意向聴取等にかかる書類作成
- 決定した措置内容を盛り込んだ周知・意向確認・意向聴取文書を作成
就業規則の変更
- 決定した措置内容を、規定例を参考にして育児・介護休業規程に反映
労使協定の締結
- 子の看護休暇等の名称変更
- 子の看護休暇等、介護休暇の勤続雇用期間6ヶ月未満の労働者を労使協定で除外している場合、除外を廃止した労使協定を締結
●引用元サイト・資料〈厚生労働省〉
育児・介護休業等に関する規則の規定例
> 育児・介護休業等に関する規則の規定例[簡易版](令和6年11月作成)> 04 参考様式
●引用元サイト・資料〈厚生労働省〉
男性の育児休業取得率等の公表について
2.雇用保険法等
2025年〈令和7年〉4月1日施行
労働者の募集を行う場合に定められている労働条件明示事項が追加されます。
自己都合退職者の給付制限短縮等
- 給付制限期間 現行:2ヶ月 → 改正後:1ヶ月に引き下げ
- 教育訓練等を自ら受けた場合 給付制限解除
就業促進手当の見直し
- 就業手当 廃止
- 就業促進定着手当 現行:40%または30% → 改正後:20%に引き下げ
教育訓練支援給付金の給付率引下げ
- 現行:基本手当の80% → 改正後:60%に引き下げ
出生後休業支援給付の創設
- 子の出生直後の一定期間以内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に
- 被保険者とその配偶者の両方が14日以上の育児休業を取得する場合
- 最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額を給付し、育児休業給付とあわせて給付率80%(手取りで10割相当)へと引き上げ
- 配偶者が専業主婦(夫)の場合や、ひとり親家庭の場合などには、配偶者の育児休業の取得は不要
育児時短就業給付の創設
- 被保険者が2歳未満の子の養育のために短時間勤務した場合
- 短時間勤務中に支払われた賃金額の10%を育児時短就業給付として給付(元の給与を超えないように調整)
- 女性、男性ともに受給可能
高年齢雇用継続給付の給付率引下げ
- 2025年〈令和7年〉4月1日以降に60歳に達する労働者から引き下げ
- 現在受給中の労働者への影響はなし
- 現行:最大15% → 改正後:最大10%
- 被保険者期間5年の受給要件は従来通り
2025年〈令和7年〉10月1日施行
教育訓練休暇給付金の創設
- 被保険者期間が5年以上の労働者が教育訓練のための休暇(無給)を取得した場合に給付
- 基本的には教育訓練のための休暇を就業規則に規定している場合に発生しうる
- いわゆるリ・スキリング支援
- 給付額内容 離職した場合に支給される基本手当の額と同じ
- 給付日数は、被保険者期間に応じて90日、120日、150日のいずれか
- 基本手当と同じ仕組みのため、休業開始時賃金月額証明書等と同様の事務手続が発生すると思われる
必要な対応
労働者の退職、教育訓練、60歳に達する場合の給付にかかる書類作成
- それぞれの給付にかかる説明に間違いがないように資料等を整理
出生後休業支援給付を受ける可能性がある労働者を洗い出し
- 本人と配偶者の両方が子の14日以上の育児休業を取得するか確認し、育児休業給付手続の際に出生後休業支援給付が反映されるようにする
- 労働者が女性の場合
- 本人が産前産後休業後、14日以上の育児休業を取得するか確認
- 配偶者が子の出生後8週間以内に14日以上の育児休業を取得するか確認
- 労働者が男性の場合 本人と配偶者の両方が14日以上の育児休業を取得するか確認
- 本人が子の出生後8週間以内に14日以上の育児休業を取得するか確認
- 配偶者が産前産後休業後、14日以上の育児休業を取得するか確認
- 労働者が女性の場合
- 育児時短就業給付を受ける可能性がある労働者を洗い出し、給付手続を行う
- 現在2歳未満の子を養育し、短時間勤務していない労働者が短時間勤務を申し出る可能性あり
育児時短就業給付を受ける可能性がある労働者を洗い出し
- 現在2歳未満の子を養育し、短時間勤務していない労働者が短時間勤務を申し出る可能性あり
●引用元サイト・資料〈厚生労働省〉
第197回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会
>【資料1】令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について
3.その他の法改正等
労働安全衛生法
労働安全衛生関係の一部手続の電子申請義務化
2025年〈令和7年〉1月より以下の手続について、電子申請が原則義務化されます。
保育施設の場合、赤文字の手続が対象となる場合が多いかと思います。
- 労働者死傷病報告
- 総括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医の選任報告
- 定期健康診断結果報告
- 心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告
- 有害な業務に係る歯科健康診断結果報告
- 有機溶剤等健康診断結果報告
- じん肺健康管理実施状況報告
必要な対応
- e-Govアカウント取得等、e-Gov利用のための準備を行う
- 労働安全衛生法の電子申請の場合、電子証明書は不要
●引用元サイト・資料〈厚生労働省〉
労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます
●引用元サイト・資料〈e-Gov〉
e-Gov電子申請 利用準備
以上、2025年〈令和7年〉の法改正について、押さえておくべきポイントをチェックしてきました。
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